モデル名
L220・L280・220
特徴
ジェネレーターが斜めに付けられているスラントモデル
説明
1928年-1930年の2年間だけ製造されたモデルで、Lの付くモデルは前期型。燃料を調整出来る初のランタンで斜めについたジェネレーターから、スラント(斜め)ランタンとと呼ばれることもあります。この後長い期間にわたり続く、220・280系のベースとなるモデルです。




ぱっと見は普通の228シリーズですが
よく見ると、燃料バルブの取り付けられ方が変。

実は228シリーズのベースとなったモデルでL228です。
傘の小さいL220も同形状であります。




手元に届いたときには少し遣れていたので、
メンテナンスをしがてらこのモデルをご紹介致します。


可動部分の固着は無く、まあまあの状態でした。





さっそくバラして部品のチェックと分解清掃。

これはタンク内に入っているフューエルチューブです。
現行型は真っ直ぐですが、これはタンクの底に沿わすように出来ています。
矢印が下側で、シルバーの細かいメッシュカバーが着いています。

このカバーを外すと、中にはジェネレーターの先に着いているような
小さな穴の空いた部品が組まれていました。

穴はふさがっていたのでクリーニングして開通~。





先をバラしてみるとこんな感じです。
一番右側は細かい網のカバーになっています。
左のパイプは一見ただの筒に見えますが、中はエアーと燃料の通る2重構造。








こちらは後期型です。
見ての通り先が変わりました。
またパイプが2本構造に変更されました。

製造の簡素化が成されたようです。









市場で見かけるこのランタンには、
大抵写真左側のR55ジェネレーターが付いています。

外して確認すると、レバーを上下してもディップクリーナーの針は
出たままで動いていませんでした。

そう言えばこのランタンには、
根元が炭化していないマントルが付いていました。
恐らく点火を試みて諦めてのでしょうね。
2箇所で燃料が分断していたので、まず点火することはできません。

ジェネレーター交換するのなら、せっかくなのでT88に変更。


T88ジェネレーターを付けるには、燃料バルブの先に
写真のような穴が空いていないと装着する事が出来ません。
ディップクリーナを取り付けるねじ穴は前期型のみで、
後期型には穴は無く、ジェネレーターはQ77を使用します。


T88自体がとても希少ですが、新品を入手する事が出来ました。
せっかくなのでオリジナルに戻してあげましょう。


前期型と後期型では、燃料バルブの形状が違っています。
これが取り敢えず、見分ける材料の一つとなります。

 

前期型                    後期型 
前期型は燃料バルブが細かいギザギザでグラファイト製。
後期型はお馴染み、12個の突起のあるプラスチック製です。


さて、見分け方を取り敢えずと言ったのには訳があります。

実はこの燃料バルブはいずれも後期型の形をしています。
希なケースだと思いますが、この様な発見を出来ることがコールマンの楽しみでもあります。






さてメンテナンスに戻ります。

長いディップクリーナーを先ほどの穴にねじ込みます。
大変細いので曲げないように注意しながら取り付けます。




燃料バルブホイールに、エンボスで CLOSE≫≫ とありますが、
このモデルにはホイールの裏にも同じエンボス文字があります。








先ほどの細いクリーナーをブロックに通し、
そのあとにジェネレーターカバーを被せて固定します。

ディップクリーナーは燃料バルブに固定されていますので、
バルブを開け閉めすることによって、クリーニングをするように出来ています。
クリーニングの手間は掛からないのですが、構造上かコストの問題なのか分かりませんが、
この後、このシステムは消えていきます。


バルブをフレームに固定します。
上の写真でブロックの一部が盛り上がっていますが、
その部分をフレームの穴にネジで押しつけます。パッキンやシールなどは無し。

矢印が燃料の通る経路。2##系などは一体になっていますよね。










横から見るとこんな感じにジェネレーターが斜め。

かなり無理のある取り付け方ですが、ちゃんとした理由が有ります。
燃料バルブの向きをこの角度にする事によって
燃料の細かい調整が出来るようになったんです。

それまではバルブを開くとバーナーから燃料がボトボト・・
点火時には気を付けないと火だるまでしたからね。






この位置からでもジェネレーターのプレヒートをしやすいように
マントルの直ぐ脇を通したかったのでしょうか。

この変な形は、苦心の末だったのかも知れませんね。




ここでちょこっと220Dとの違いをご紹介。
ベイルの取り付け方がちょっと違います。

どっちの方が頑丈なのでしょうね。














タンクに圧を掛け、燃料漏れのチェック。

問題が無いのでマントルを着けて下焼きを始めます。
手に入れた時は、この状態で終わった様でした。

ゆっくりと燃料バルブを開きます。











ポコッという音の後に、コオーッと、無事に点火。

始めは息継ぎをしていましたが、ジェネレーターが暖まると安定し
その後も数十分間のテスト燃焼は問題なく灯ってくれました。














元々オリジナルのマイカグローブが付いていました。

ガラスのホヤと違い、使い込まれたマイカグローブは
ホヤの光を柔らかくし、照らされた空間を癒やしてくれます。






















スラントが幾つか揃ったので並べて見ました。
スラント
左から、1928年3月・1928年8月・1929年5月・1929年8月製造
そして、L220・220・L228・220 となっています。

年数順に並べましたが、Lが付いたり付かなかったりとマチマチ。
試行錯誤の苦労がうかがえます。